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玉山祠 2

玉山祠本殿の内部。

玉山祠 本殿の内部

玉山祠 本殿の内部

本殿への入口(出口)に位置する楼閣(得月楼)。

玉山祠 得月楼

玉山祠 得月楼

ホアンキエム湖の湖岸から湖と玉山祠のある島を見た様子。
玉山祠へは、左手の岸から島へ掛かっている橋を渡って入る。

玉山祠は、建築、装飾等自体に非常に大きな見所があるという訳ではないが、
玉山祠を取り囲むホアンキエム湖等と合わせて
この一帯は散策に向いた風情ある観光エリアとなっている。

周囲の観光地を訪れる場合は是非訪問コースに含めるとよいかと思う。

おすすめ度 ☆☆+☆半分

入場時間 7:30〜18:00
休日 無休
料金 1万ドン

玉山祠 1

玉山祠は、ハノイ市中心街東部の景勝地ホアンキエム湖に浮かぶ
小さな島に建つ祠である。

玉山祠の入り口。
「福」と「禄」の鮮やかで大きな字が一種の現代的なデザインのようにも映る。

玉山祠 入口

玉山祠 入口

玉山祠の本殿(?)。
屋根瓦や外壁の色彩と素材をはじめ、建物の全体的な建築様式は文廟の建築群と類似している。

玉山祠 本殿

玉山祠 本殿

玉山祠本殿の内部。

中央に「四天度世」と書かれた額、
両脇にクジャクの置物、鮮やかな装飾の陶器、赤地に金銀の装飾の旗等が置かれている。

玉山祠 本殿の内部

玉山祠 本殿の内部

パウル・クレー おわらないアトリエ展

東京国立近代美術館で開催中の「パウル・クレー おわらないアトリエ」展を先週末鑑賞してきた。

パウル・クレー おわらないアトリエ 展

パウル・クレー おわらないアトリエ 展

スイス生まれの画家パウル・クレー(Paul Klee, 1879-1940)は、
長らく日本の人々に愛され、これまでにも数多くの展覧会が開催されてきました。
それらの展覧会では作品の物語性や制作上の理念が詩情豊かに詠われ、
多くの人々にクレーの芸術の魅力を伝える役割をはたしました。

国立近代美術館で初となる今回のクレー展では、今までの展覧会成果を踏まえた上で、
これまでクローズアップされてこなかった
「クレーの作品は物理的にどのように作られたのか」という点にさまざまな角度から迫ります。
この観点から作品を見てみるならば、視覚的な魅力を体感できるのみならず、
その魅力がいかなる技術に支えられているのか、ということまでもが明らかになるでしょう。

「パウル・クレー おわらないアトリエ」展は、
パウル・クレーの作品約180点を、主に、作品の制作過程、使用技法等に焦点を当てて紹介する個展である。

展示構成
第一部 現在/進行形 ー アトリエの中の作品たち
第二部 プロセス1 写して/塗って/写して ー 油彩転写の作品
第三部 プロセス2 切って/回して/貼って ー 切断・再構成の作品
第四部 プロセス3 切って/分けて/貼って ー 切断・分離の作品
第五部 プロセス4 おもて/うら/おもて ー 両面の作品
第六部 過去/進行形 ー “特別クラス”の作品たち

クレーの作品には
素朴で、叙情的な(そしてときに子供っぽい無邪気さのある)画面の背景に
緻密で勤勉な手作業の存在が伺い知れる作品が多いが、

今回の展覧会では、
その制作過程で使用された様々な技法とその代表的な作例が紹介・展示されている。

クレーの作品、彼の芸術の制作過程(あるいは、芸術作品一般の構想・制作過程)等に
興味がある人にとっては、興味深い展示内容かと思う。

おすすめ度:☆☆☆+☆半分

東京国立近代美術館

東京国立近代美術館

[開催情報]
会期 2011年5月31日~7月31日
会場 東京国立近代美術館
開館時間 10:00~17:00 (7月の金・土は20:00まで)
入場料 大人1500円、大学生1100円、高校生700円
公式ホームページ http://klee.exhn.jp/

ワシントン・ナショナルギャラリー展

国立新美術館で開催中のワシントン・ナショナルギャラリー展を鑑賞してきた。

国立新美術館

国立新美術館

ワシントン・ナショナルギャラリー展では、
同美術館の所蔵作品から、印象派、ポスト印象派の作品計83点が展示されている。

出品点数は平均的な展覧会と比較して少ないが、
出品作品の質は高く、
特にマネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ等の代表作も複数含まれているので、

上記の作家が好きな人、印象派とそれに続く時代の絵画に興味がある人にとっては
一見の価値がある展覧会かと思う。

また、定番的なテーマ(「印象派」)の展覧会で
展示内容も優れているので、

この夏何か無難(?)で良い展覧会を見たいという方にも
おすすめの展覧会だ。

展示構成と、特に見どころと思われた作品

・第一部 印象派登場まで
クールベ、コロー、マネ等、印象派に先立つ作家・印象派前期の作家の作品15点を展示。
マネの「鉄道」、「オペラ座の仮面舞踏会」、「牡蠣」等。

・第二部 印象派
モネ、ルノワール等印象派中期〜後期の作家の作品27点を展示。
モネ「日傘の女性、モネ夫人と息子」、「アルジャントゥイユ」、「ヴェトゥイユの画家の庭」
ルノワール「ポン・ヌフ、パリ」「シャトゥーの漕ぎ手たち」等

・第三部 紙の上の印象派
印象派とその前後の時期の画家の版画、デッサン等27点を展示。

・第四部 ポスト印象派以降
セザンヌ、ゴッホ、スーラ等、印象派後の画家の作品14点を展示。
セザンヌ「『レヴェヌマン』紙を読む画家の父」、「赤いチョッキの少年」、

ゴッホ「自画像」、「薔薇」、
スーラ「ノルマンディのポール=アン=ベッサンの海景」等

おすすめ度:☆☆☆☆+☆半分

[開催情報]
会期 2011年6月8日~9月5日
会場 国立新美術館
開館時間 10:00~18:00
入場料 大人1500円、大学生1200円、高校生800円
公式ホームページ http://www.ntv.co.jp/washington/index.html

モホイ=ナジ/イン・モーション展

6月上旬、神奈川県立近代美術館 葉山館で開催中の「モホイ=ナジ/イン・モーション」展を鑑賞してきた。

モホイ=ナジ/イン・モーション展

モホイ=ナジ/イン・モーション展

構成主義の美術家・写真家、バウハウスの教師として知られるモホイ=ナジは、
20世紀前半の前衛芸術運動に参加して「光と運動による造形」という創作理念を確立し、
ハンガリーからウィーンへ、そしてドイツ、オランダ、イギリスを経てアメリカへと、
自らも世界の都市を移動しながら、多様な造形・教育活動を行いました。
・・・

本展は、多数の貴重な未公開作品を含む遺族所蔵のコレクションを中心に、
ハンガリー時代の絵画、キネティック彫刻の代表作《ライト・スペース・モデュレータ》、
カメラを使わない写真技法「フォトグラム」、アメリカ時代のカラー写真など、
国内外の美術館から集められた約300点の作品・資料によって
モホイ=ナジの仕事を展望する日本で最初の回顧展です。
その多くが国内初公開となります。

「モホイ=ナジ/イン・モーション」展は、近代の写真史、デザイン史上に
重要な役割を果たした芸術家の一人であるモホイ=ナジの個展である。

展示は、彼が活動した都市と時代によって全5章に区切られている。

展示構成
・第一章 ブダペスト 1917-1919 芸術家への道
・第二章 ベルリン 1920-1922 ダダから構成主義へ
・第三章 ワイマールーデッサウ 1923-1928 視覚の実験
・第四章 ベルリンーロンドン 1928-1937 舞台美術、広告デザイン、写真、映画
・第五章 シカゴ 1937-1946 アメリカに渡ったモダンアートの思想

第一章では、
モホイ=ナジがまだ彼自身の様式を見いだす前の、模索期の作品が20数点展示されている。
当時流行だったと思われる、表現主義的な様式に則ったデッサン、絵画等。

第二章では、
モホイ=ナジ独自の構成主義的様式が開花した、
特徴あるコラージュ、版画、写真作品等が50数点展示されている。

近代デザインの様々な文法を先駆的に視覚化した
コラージュ、版画群(作品番号Ⅱ-012〜Ⅱ-037)、
独自の構図上の特徴を持つ写真群(作品番号Ⅱ-044〜Ⅱ-058)等
見どころとなる作品が多い。

第三章では、
バウハウス時代に制作された構成主義的写真作品、同校の出版書籍等
質・量ともに充実した計約100点の作品・資料が展示されている。

前章に引き続き、優れた写真作品が多く展示されている。

第四章では、
舞台美術、映像作品、写真、ブックデザイン等、
バウハウス離脱後様々な分野に活動の範囲を広げた足跡が70数点展示されている。

展示作品中では、写真、映像作品に興味深い作品が多かった。

第五章では、
アメリカ時代のデッサン、油絵、写真等が40数点展示されている。

モホイ=ナジは、
その功績と比べ知名度、作品が展示される頻度等は相対的に低いもしれないが、

非常に興味深い芸術家であるし、
また、この展覧会の内容自体も、
彼の芸術の概要を理解するのに足りる包括的なものになっている。

近代写真、デザイン等に
興味がある方にはおすすめの展覧会だ。

おすすめ度:☆☆☆+☆半分

神奈川県立近代美術館 葉山館

神奈川県立近代美術館 葉山館

[開催情報]
会期 2011年4月16日~7月10日
会場 神奈川県立近代美術館 葉山館
開館時間 9:30~17:00
入場料 大人1100円、20歳未満・学生950円、65歳以上550円、高校生100円
公式ホームページ http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2011/nagy/index.html

[巡回情報]
2011年7月20日ー 9月4日 京都国立近代美術館
2011年9月17日ー 12月11日 川村記念美術館

写楽展

5月下旬、東京国立博物館で写楽展を鑑賞してきた。
(残念ながら、現在は会期終了)

写楽展

写楽展

この写楽展は、写楽の版画全146図のうち142図を展示するもので、
出品作品の質量、展覧会のコンセプト等含め、非常に良い展覧会であった。

展覧会全体を通して
見どころとなる作品が多かったが、

特に、写楽の作品を全四期に分けて時系列で展示していた
後半の部分のうち、

第一期、(それに次いで)第二期の展示内容の中に
優れた作品が多かった。

時系列展示の第一期では
写楽の様式の独創性が最も明快に表れている(そして質的にも優れた)大首絵
が30数点展示されており、

「三代目坂田半五郎の藤川水右衛門」、「二代目嵐龍蔵の金かし石部の金吉」、
「谷村虎蔵の鷲塚八平次」、「市川蝦蔵の竹村定之進」、「初代尾上松助の松下造酒之進」、
「中島和田右衛門のぼうだら長左衛門と中村此蔵の舟宿かな川やの権」等は

人物描写、構図、色彩、保存状態の良さのいずれの面からも
最上級の浮世絵と言えるかと思う。

時系列展示の第二期では
全身像の役者絵が40数点展示されており、

迫力、活力にあふれる第一期の大首絵とは違った
安定した構図で、落ち着いた描写の秀作が含まれている。

「初代市川男女蔵の富田兵太郎」、「三代目大谷鬼次の川島治部五郎」、
「四代目松本幸四郎の大和のやぼ大じん 実は新口村孫右衛門と初代中山富三郎の新町のけいせい梅川」等。

上記の展示部門以外では、

同じ作品で刷り版、保存状態等が異なるものを並列して展示していた、
「摺りの比較」のセクションで

非常に優れた保存状態の
写楽の作品を見ることができた(これらの作品は、上記時系列展示にも別刷りのものが展示されているが)他、

写楽に先立つ時代の浮世絵を展示する
「写楽以前の役者絵」、「写楽を生み出した蔦屋重三郎」のセクションでは

写楽以外の浮世絵作家の
優れた作品もいくつか展示されていた。

鳥居清倍「市川団十郎の竹抜き五郎」、
喜多川歌麿「当時全盛美人揃 玉屋内小紫 こてふ はる次」、同「婦人相学十躰 浮気之相」等

評価:☆☆☆☆☆

[開催情報]
会期 2011年5月1日~6月12日 ※会期終了
会場 東京国立博物館
開館時間 9:30~17:00
入場料 大人1500円、大学生1200円、高校生900円
公式ホームページ http://sharaku2011.jp/

芸術写真の精華 日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展 レビュー

GWの前半、東京都写真美術館で開催中の
『芸術写真の精華 日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展』を鑑賞してきた。

芸術写真の精華 日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展

芸術写真の精華 日本のピクトリアリズム 珠玉の名品展

展示作品は、東京都写真美術館と国内の他美術館・博物館・団体・個人等が所属する、
1900年代〜30年代の日本のピクトリアリズム写真
(この時代、主題、様式等の面で、意図的に絵画に似せて撮られた写真)約120点。

作品はほぼ年代順に展示されていて、

開始から3分の1位の作品(1900年〜1925年頃)の中には、
単純な「ピクトリアリズム」という言葉には収まりきりそうにない
独特な作家性が発揮されている作品が一定数(3分の1程度)含まれ、

中盤〜終盤の入り口にかけての作品(1925年〜1930年頃)の作品の中には、
やや定型的な、しかし恐らく典型的な「ピクトリアリズム」の作品と呼べそうな、
叙情的、(ときに)工芸品的作品が目立った。

また、終了直前の30点ほどの作品(1931年頃〜)の中には、
近代的・都市的な風景への視点(郊外感覚)、造形感覚等、
「ピクトリアリズム」とは少し別の面白い方向性も同時に備えた作品が一部含まれていた。

具体的な作品名を挙げると、

序盤の展示作品(1900年〜1925年頃)のうち、
各作家独自の優れた(あるいは特異な)造形感覚が発揮されていると思った作品は、

日本画的な様式感覚、ストレートな撮り方、絵画的演出が奇妙な均衡を保っている
黒川翠山の題不詳の作品(作品番号1)、

ストレートな撮り方と絵画的な演出が絶妙なバランスで混在する
野島康三『髪梳く女』、同『柳宗悦氏』、小野隆太郎『ラウス氏』等の人物写真、

構成主義的な、抽象度の高い画面構成の
安井仲治『分離派の建築と其周囲』、同『クレインノヒビキ』等。

終了直前の30点ほどの作品(1931年頃〜)のうち、
近代的・都市的な洗練された画面スタイル等の点で型にはまらない新鮮さを持った作品と思われたのは、

福原信三『「西湖風景」より』(作品番号91)、同『「西湖風景」より』(作品番号92)、
福原路草『ひと叢の雑草』、同『題不詳(風景)』等。

この展覧会のテーマに関して言えば、

日本の写真史における「ピクトリアリズム」という
ひとつの芸術運動、芸術潮流を、

その運動を代表する豊富な実作例に基づき(それも、自館の所属作品を中心として)、
紹介、検証しようという企画内容自体、

質量ともに卓越した日本近代写真のコレクションを保有し、
かつ日本(及び世界)の写真史に関して
継続的な研究・検証作業を行っている東京都写真美術館でこそ主催可能な貴重な内容で、

国内、海外問わず
他の美術館で同様の展覧会を見る機会を得るのが難しい種類の展示かと思う。

従って、
日本の写真史に興味のある人には必見の展覧会であるし、

表現上の特徴が面白い写真も多いので、
写真を見るのが好きな人、自分で写真を撮る人等にとっても、
単純に見てかなり楽しめる展示かと思う。

おすすめ度:☆☆☆+ ☆半分

[開催情報]
会期 2011年3月8日~5月8日
会場 東京都写真美術館
開館時間 10:00~18:00
休館日 毎週月曜
入場料 大人800円、大学生・高校生700円、中学生・65歳以上600円
公式ホームページ http://syabi.com/contents/exhibition/index-350.html

MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方展 レビュー

GWの前半、東京都現代美術館で開催中の
「MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方」展を鑑賞してきた。

「MOTアニュアル」は、当館が、
日本/東京の新しい美術をグループ展形式で紹介するものとして、
1999年より行っているシリーズ企画です。

11回目となる本年は、「Nearest Faraway 世界の深さのはかり方」を副題に、6人の作家により構成します。

いたるところでさまざまな価値観の転換期をむかえているような現代にあって、
美術の世界も例外ではありません。
本展では、身近にある素材といわば端的に手仕事と呼べるような技法を用いて、
自身の足元、そのよって立つところをあらためて問うような制作を続けている作家たちを紹介します。
展覧会公式ページより)

MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方展

MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方展

上記紹介の通り、
この「MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方」展は、

同時代の優れた現代美術作家を紹介するという趣旨で
東京都現代美術館が毎年開催している「MOTアニュアル」展の今年版で、

過去の数回の(私が見たことある)展示と同じく、
今年の展示も、出品作品の質、展示構成・展示方法の練られ方等の点で優れた内容かと思った。

出品作家は30代5名、40代1名の計6氏。

・冨井大裕
・木藤純子
・関根直子
・池内晶子
・椛田ちひろ
・八木良太

出品作品の中で個人的に特に面白いと思ったのは、

冨井大裕氏の、
身近な文房具(色鉛筆、画びょう、クリップ)、事務用品(段ボール箱)、
生活用品(プラスチック製の衣装ケース、タオル、食器用スポンジ)等を、

単独製品の色違い、複数製品の組み合わせ、あるいは左記両方の手法の併用で
何個(何本、何箱)も反復的に組み合わせたオブジェ作品
(『band and carton』、『four color sponges』、『case and towel』、『ゴールドフィンガー』等)や、

池内晶子氏の、
数メートル四方の展示エリアに、
中央の円形の空白を取り囲むように、細く繊細な赤い絹の糸を複雑に編み合わせて
抽象的な空間構成を作り出す、インスタレーション(?)作品
(『Knotted Thread-Red』) 等。

上記以外にも色々面白い作品が出品されており、
現代美術が好きな方には楽しめる展覧会かと思う。

おすすめ度:☆☆☆+ ☆半分

[開催情報]
会期  2011年2月26日~5月8日
会場 東京都現代美術館
開館時間 10:00~18:00
休館日 毎週月曜
入場料 大人1000円、大学生・65歳以上800円、中高生500円、小学生以下無料
公式ホームページ http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/123

フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展 レビュー

先週末、渋谷のBunkamuraで開催中の
『フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画』展を鑑賞してきた。

フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展

フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展

展覧会の出品作品は、
フェルメールの『地理学者』を含む、
17世紀のオランダ・フランドル絵画 95点。

目立った大作の出品はない(目玉として扱われている『地理学者』も、
フェルメールの第一線級の絵画という訳ではない)ものの
歴史画、肖像画、風俗画、静物画等の
各ジャンルで、秀作、佳作が展示されており、

この春東京で開催されている展覧会の中では、
写楽展、レンブラント展に次いで質の高い展覧会かと思う。

鑑賞の参考までに、
以下、展示セクション(全5部)別に
見どころとなりそうな作品、面白いと思った作品等を列挙する。
(※印のものは特に見どころと思った作品)

1. 歴史画と寓意画

・ルーベンスとヤン・ブックホルスト『竪琴を弾くダヴィデ王』 ※
・レンブラント『サウル王の前で竪琴を弾くダヴィデ』 ※

上記2点は有名画家による作品だが、共に質的にかなり優れていて、
展覧会の全出品作品の中で、じっくり鑑賞したい作品の筆頭に挙げられる作品かと思う。

2. 肖像画

・フェルディナント・ボル『若い男の肖像』
・レンブラント『マールトヘン・ファン・ビルダーベークの肖像』
・フランス・ハルス『男の肖像』

肖像画のセクションはどの作品もかなり似通った質(秀作揃い)だったが、強いて挙げるならば
上記3点の作品が比較的優れているように思った。

3. 風俗画と室内画

・ヨハネス・フェルメール『地理学者』 ※

フェルメールの数少ない現存絵画の1点。

『絵画芸術』、『牛乳を注ぐ女』、『デルフトの眺望』、『真珠の首飾りの女』等、
フェルメールの最上級の作品群と比べると、
人物表現・空間表現の自然さ(完成度の高さ)、構図・色彩の洗練度等の面で若干質が落ちるかと思うが、
かなり優れた作品であることに変わりはないので是非じっくり鑑賞したい。

・ヘリット・ダウ『夕食の食卓を片付ける女性』
・ピーテル・コッド『演奏家たち』
・アドリアーン・ブラウエル『足の手術』
・アドリアーン・ブラウエル『背中の手術』
・アドリアーン・ファン・オスタード『納屋で畜殺された豚』

風俗画のセクションでは、フェルメール『地理学者』以外に、
上記5点をはじめとする、主題に面白みのある作品(教訓的な主題、日常の光景、グロテスクな対象等)が
色々展示されている。

4. 静物画

・ヤン・ブリューゲル(父)の工房『ガラスの花瓶に生けた花』 ※
・アブラハム・ミフノン『合金の盆の上の果物とワイングラス』
・ピーテル・ド・リング『果物やベルクマイヤー・グラスのある静物』

静物画のセクションは全般的に良い作品が多いと思ったが、
特に上記3点は描写力、構図・色彩の調和等の面で優れているかと思う。

5. 地誌と風景画

ヤン・ブリューゲル(父)『人物のいる森の風景』
ヘルマン・サフトレーフェン『絶壁のある川の風景』
ヤン・ファン・ホイエン『ハールレムの海』 ※
ヤーコプ・ファン・ロイスダール『2羽の白鳥のいる森の湖』 ※

風景画のセクションは、出品点数が、全体の3分の1以上に当たる37点と多く、
質、主題、描き方等は作品ごとにまちまちだったが、
上記4点をはじめ、優れた風景画も10点前後含まれていた。

最後に、この展覧会、
広告、チラシ、展覧会タイトル等ではフェルメールの『地理学者』が
大きな目玉として宣伝されているが、

実際のところ
フェルメール『地理学者』のみが出品作品の中で突出して優れているという訳ではなく、

上記の通り、各絵画ジャンルで
良作・秀作が数点〜10点程度均等に展示されている展覧会なので、

見に行かれる方は、各セクション、各作品に
比較的均等に時間をかけて鑑賞されることをおすすめする。

おすすめ度 ☆☆☆☆

[開催情報]
会期  2011年3月3日〜5月22日
会場 Bunkamura ザ・ミュージアム
開館時間 10:00〜19:00 (金、土曜は21:00まで開館)
休館日 なし
入場料 大人1500円、大学生・高校生1000円、中学生・小学生700円
※最新の開館情報は公式ホームページで要確認

[巡回情報]
2011年6月11日ー 8月28日 豊田市美術館

レンブラント展 (国立西洋美術館) レビュー

先々週の土曜に上野の西洋美術館でレンブラント展を鑑賞してきた。

レンブラント展 (国立西洋美術館)

レンブラント展 (国立西洋美術館)

この展覧会(「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」)では、
レンブラントの油絵10数点、版画約100点、関連作家の作品約10点の計124点が展示されている。

出品作品の大部分が版画であるが、
これだけの量のレンブラント作品を日本で見られる機会は比較的少ないし、
今回の展示作品には、油絵、版画共に優れた作品が多く含まれているので、

この(2011年)春東京で開かれている展覧会の中では、
写楽展(東京国立博物館)、フェルメール展(Bunkamura)等と並んで
質の高い展覧会かと思う。

※写楽展はまだ開催前だが、公式ホームページ等の情報を見る限りでは
相当内容の優れた展覧会のように思える。

出品作品のうち、
特に油絵に関しては、出品点数が少なく、
かつ版画と比べて巡り会える機会も希少なのでじっくり鑑賞しておきたいところだ。
(『東洋風の衣装をまとう自画像』、『アトリエの画家』『書斎のミネルヴァ』、
『旗手(フローリス・ソープ)』等)

版画に関しては、
小・中規模の作品が多い(版画なので当然油絵よりも小さいサイズになりがちだが)ものの、
主題、表現、刷り方等のバリエーションも多様なので
どの作品も興味深く鑑賞できるかと思う。

ただし、版画の場合、会場の混雑具合によっては
全ての作品に近寄って鑑賞することは難しいかもしれないので、

そのような場合は、いくつか気になる作品をピックアップして、
集中的に鑑賞してもよいだろう。

鑑賞に当たっては、
公式サイト、会場の解説等の他、
次のような視点(一例)から作品を見るとより有意義な鑑賞ができるかもしれない。

1) レンブラント様式の特徴をつかむ

レンブラントの絵画、版画は、「光と影」、「光と闇」等と形容される、
明暗と濃淡の(しばしば)劇的な対比が様式上の特徴である。

(展覧会のタイトルにも「光と闇」という表現が使用されているように)

また、レンブラントの同時代の北方絵画(バロック絵画)に共通の、
画面中にただよう重層的で動的な空気感、
人物・衣装・背景・小道具・風景の輪郭が溶け合って生み出される
画面内の色彩の一体的な調和等も、
今回出品中のレンブラントの作品(特に後期のもの)には強く表れている。

この展覧会はレンブラントの作品を100点以上鑑賞できる貴重な機会なので、
それら一連の作品の鑑賞を通して、
是非上記のようなレンブラント美術の様式的特徴を視覚的に把握し、楽しむようにしたい。

今回の展覧会では他の画家の作品がわずかな点数しか展示されていないため、
レンブラントの作品を会場内で他の画家の絵画・版画等と
比較しつつ鑑賞することはできないが、

事前にイタリア・ルネサンスの画家
(誰の作品でもよいが、例えばレオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ等)の絵画や
北方ルネサンスの画家(ヤン・ファン・エイク、デューラー等)の絵画等を
画集等で数点鑑賞し、
そのイメージを頭の中に持っておくと、

展示会場の作品を鑑賞する際に
レンブラントの作品独自の特徴(上で述べたもの)が捉えやすくなるだろう。

2) 自画像画家としてのレンブラント

レンブラントは自画像を多く描いた画家だが、
今回の展覧会にも、油絵、版画合わせて10点弱のレンブラントの自画像が展示されており、
各作品それぞれに興味深い構図、様式を備えている。

豪華な衣装に身を包み足下に犬を従える自画像(『東洋風の衣装をまとう自画像』)、

画面中央に(部屋の大きさと比べると不釣り合いと思えるほど)大きなサイズのイーゼル、
画面左奥に絵筆を持ったレンブラントが描かれている
珍しい構図の自画像(『アトリエの画家』)、

手すりに腕をかけ体をねじった体勢のレンブラントの顔、表情、腕、衣服等を
精密な線の組み合わせで掘り出した版画の自画像(『石の手摺りにもたれる自画像』) 等

一般的に、自画像は、誰か顧客から注文を受けて描かれるというよりも
画家自身の目的(自己表現、技法の探求、内面の探求等)のために描かれることが多いので、

レンブラントの自画像を鑑賞する際にも、
作品の質、描き方、色彩等の特徴に加え、

・その自画像がどのような目的で描かれているか
・その自画像にレンブラントのどのような自己像が投影されているか
・その自画像でどのような表現上の実験が行われているか

等に注目・推測しつつ鑑賞すると、さらに面白く見られるかと思う。

3) 多種多様なレンブラント版画

今回の展覧会ではレンブラントの版画作品が100点以上展示されており、
作品毎に、主題、様式、刷り方、用紙等のバリエーションが様々に異なっている。

主題面では宗教版画、人物版画、自画像、風俗版画、静物版画等の各ジャンルで、
優れた作品が多く展示されており、

宗教版画の『病人たちを癒すキリスト(百グルデン版画)』、
『3本の十字架』、『エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)』、
風景版画の『オンファル』、『3本の木』、
自画像の『石の手摺りにもたれる自画像』あたりは是非じっくり鑑賞したい作品だと思う。

様式面では、
典型的なレンブラント様式(光と影のコントラストを生かし、
かつ生気あふれる空気の濃淡等も描かれているもの)の作品の他に、

レンブラントが油絵ではあまり使用しないような様式
(光の効果、空気の濃淡等の劇的な演出が用いられない、
または用いられたとしても控えめにしか使用されず、
むしろ、細密な線で対象(人物、風景、物体)を写実的、かつ精密に描写することに
重点が置かれた様式)の作品も出品されており、

描き方の面から作品同士を色々比較しながら鑑賞すると
レンブラント版画の様式面での多様性や違いが見えてきて興味深いかもしれない。

※前者の作品例としては、『病人たちを癒すキリスト』、『3本の木』、
後者の作品例としては、『窓辺で描く自画像』『貝殻』『オンファル』等

刷り方、用紙の面では、
この展覧会には、同一主題で、濃淡、構図、刷り具合、用紙等が異なる
版画の連作が数組展示されているが、

その中には、上記のどれかの要素を少し変えただけで
画面の印象が大きく異なっている版画も多く、

連作内の各作品を比較して鑑賞すると
色々発見点が多いはずだ。

※具体的には、『3本の十字架』、『エッケ・ホモ』の各連作等。

[まとめ]
今回のレンブラント展は出品作品の質も平均して高く、
上記以外にも様々な観点から楽しめるかと思うので

4月、5月で何か展覧会に行きたいと思っている方は、
是非行き先候補に入れることをお勧めする。

※もし可能なら、ゴールデンウィークと会期末直前の2週間程度の期間を避けて訪れたほうが、
極端な混雑を避けられて、作品の鑑賞が若干スムーズになるかと思う。

おすすめ度 ☆☆☆☆ + ☆半分

[開催情報]
会期  2011年3月12日〜6月12日
会場 国立西洋美術館
開館時間 9:30〜17:30 (金曜は20:00まで開館)
休館日 毎週月曜
入場料 大人1400円、大学生1100円、高校生600円、中学生以下無料
※最新の開館情報は公式ホームページで要確認

[巡回情報]
2011年6月25日ー 9月4日 名古屋市美術館